星間ブリッジ 1~4巻
きゅっきゅぽん
小学館
1930年代、日中戦争がはじまる前年、上海に移り住んだ、少女「ハル」の眼を通して描いた物語です。
父親の仕事の都合で上海で暮らすことになった小学生の「ハル」は、中国人の少年「シン」と親しくなります。
あるひ、シンが日本人のいじめっ子グループにいじめられていると知ってハルは、、、
中国上海で暮らす日本人同士の差別や、日本人・中国人の対立、そして友情、信頼、避けらない戦争の影響。
主人公ハルちゃん小学低学年(?)~女学校~終戦あたりまでが描かれています
ハルちゃんの、勇気には何度も感動させられます。正直でまっすぐなハルちゃん。ハルちゃんのまっとうな感覚を忘れてはいけない、そう思います。
2巻の最終ページは、こころを揺さぶられました。
また、4巻の「200ページ」。このシーンでいろんなことが救われるような気がしました。信じられるような気がしました。
平和とは何だろう、と真面目に考える。そんな気にさせられるのはこの作品が一貫してもつ、「まじめさ」「誠実さ」。直球です。
私のつたない文章では紹介しきれないのですが、まずは、手に取って読んでいただきたい!
「漫画」がここまできたか、と思えるような作品です。
この重いテーマの作品を、まだ20代の若いお嬢さんが書いたというのもおどろきです。
この「きゅっきゅぽん」さんという作家さんは、デビューしてまだ数年というかたです。
武蔵野美術大学の日本画科(入るのはとても難しい学科だそうです)を卒業されたという経歴をもつ「きゅっきゅぽん」さん。名前は何ともユニークですが、画力はすさまじく、すばらしい。さすがです。
この作品は「ゲッサン」という少年漫画雑誌に掲載されていたので、多くの「少年・少女」たちの目に触れたであろうということは、大変喜ばしいことです。
わたしも当初はこの作品をよむために「ゲッサン」を購読しておりました。
(きゅっきゅぽんさんのほかには「かんばまゆこ」さんの作品がおもしろかったです。かんばさんのは、ギャグマンガでしたが、けっこうハマりました)
50過ぎたおばさんに「少年漫画雑誌」を買いに行かせる力が「きゅっきゅぽん」さんにはありました。
主人公「ハル」ちゃんのモデルは作者のおばあさま。
おばあさまに取材されて描かれた作品です。
世界史を学んでも、 日本と中国の戦前~戦後の出来事は 教科書にはほんの少ししか書かれていません。この時代の一般の人の暮らしがかいまみれるということにおいても貴重な資料となるのではないでしょうか。
庶民のというよりは、どちらかというとエリート家庭「ハルちゃん」一家ですが、ハルちゃんの大きなお屋敷、上海の風景、下町の様子などが、いきいきとえがかれています。
ストーリーも素晴らしいですが、この「絵」なしには成り立たないでしょう。
若いお嬢さんが描いたというのに、この作品がかもしだす「懐かしさ」はなんなのでしょう。作者がほんとに美大を卒業したばかりのお嬢さん(執筆当時)、というのが信じがたいくらいです。
また、巻末についているおまけのページは、作品のこぼれ話や、作者の人となりをうかがわせる楽しいページとなっております。
ぜひぜひ、親子でよんでいただきたい本です。
残念ながら、書店を何軒かまわってみましたが、現在は書店ではみかけません。発売当初はみかけましたが、今は店頭では入手しづらいと思います。