銀河鉄道の父
門井慶喜
講談社
宮沢賢治の父の視線を通して語られる「賢治」の物語です。
賢治誕生の知らせを受けたところから、なくなった少し後までが描かれています。質屋を家業とする賢治の父、政次郎は、息子の賢治を誇りに思い溺愛しているが、立場上、威厳をもって厳しく接している。
これはフィクションであるということを前提にしても、こうだったのではないか、と思わせるリアリティがあるので、引き込まれてしまいます。
特に、全編通しての「花巻弁」は自然で、宮沢賢治作品の世界の延長にあるようにも感じます。
明治・大正期の裕福な家はこんな様子だったのか、優秀であっても、上の学校への進学は中名k認められなかったなどのエピソードもあありました。
賢治ファンとしては、神々しいような賢治像をもてしまうのだが、この物語の賢治は、ロマンティストな天才肌であるが、少々困ったお坊ちゃんであったようです。
天才をこの世に出し、そして見送った一人の男の物語。
宮沢賢治ファンでなくとも、楽しめる本です。
この作品は「直木賞を」受賞していますが、私がこの本に出会ったときは「直木賞候補」
でした。
実は門井慶喜の「家康、江戸を建てる」を本屋でさがしていたら、みつからず、かわりに「銀河鉄道の父」が平積みで並べてありました。
手に取って、
ぱらぱらと最初の1~2ページを読んで、そのままレジに直行しました。
早く家に帰ってこれを読まなくては!!
そう思わせる本でした。