こんとあき
林明子
福音館書店
こんはおばあちゃんてづくりのきつねのぬいぐるみです。
あきちゃんがうまれたとき、おばあちゃんはぬぐるみのきつねのこんをあきちゃんのもとへとおくりだしてくれました。
こんはあきとっしょにそだちます。
いつしかあきはこんよりもおおきくなりました。そして、こんはからだがふるくなってほころびてしまいまいた。
するとこんは、、、、。
ぬいぐるみを相棒にしているおこさんは多いと思います。
ぬいぐるみは家族同然です。けれど、自分以外はそう思っていないのではないか、ということをうすうす気づいているでしょう。
しかし、「こんとあき」の世界は違います。
こんは、切符をかって、電車に乗ることもできるし、お弁当を買いいくこともできます。車掌さんもこんを「乗客」としてあつかってくれています。
同じような「相棒」をもつお子さんなら、自分のぬぐるみが、きちんと社会にうけいれてもらっているようなうれしさを感じるのではないでしょうか。
こどもときつねのぬいぐるみの旅は、物語と分かっていても、ドキドキします。
こどもむけのお話としては結構スリルのあるおはなしだと思います。
林明子さんの絵もすばらしいです。日本の女のこを、こんなにかわいらしく絵で表現できる人はいないと思います。
実は、「こんとあき」は私の友人がプレゼントしてくれました。まだ結婚したばかりで、子どももいない時期でした。
私が幼いころの思い出を友人語ったとき、友人は「こんとあき」を思い出したそうです。それで、「ぜひ読んでみて」と送ってきました。
私の話はこうです。
わたしにも、くまのぬぐるみ「くまちゃん」という相棒がいました。
朝の「おかさんといっしょ」もならんでみましたし、おやつのアイスクリームも分け合う仲でした。
月日とともにくまちゃんはボロボロになっていきました。
あるとき、母が、父の大きな枕をもってきて、そこへくまちゃんを寝かせました。
神妙な顔をして、
「これから、くまちゃんの手術をおこないます」
といいました。
そして、
「今、麻酔の注射をしました。なのでくまちゃんは痛くありません。」
私も姉も、くまちゃんのそばでかしこまって見守りました。
母はくまちゃんのうでや首の糸をほどき、新しい綿を詰め、また縫合しました。破れているところも縫いました。
「くまちゃんはしばらく入院します。ここでしばらく安静にしてください」
くまちゃんはしばらくの間、父の枕のベットで療養しました。
母は、そういうことをするタイプではなかったように思います。
現実的というか、くまちゃんのことも「物」と思っていたのではないかと、その時までは思っていました。
けれど、「くまちゃん」を家族のように扱ってくれたこと、痛くないように麻酔をしてくれたこと、しばらく入院が必要だと言ってくれたことなどが、今でも、うれしく懐かしい思い出です。
わたしも、こどもたちが幼いころ、ぬぐるみや人形をなおすときは、母がしたように大きな枕をベッドにして、麻酔をして、手術をおこないました。