小沢正 ぶん
武井武雄 え
小峰書店
むかしばなしのようでむかしばないではないような不思議な読後感のあるおはなしです。
ねずみむらのねずみたちは、森の奥のお堂にまつっている「だるまさま」をだいじにしています。秋の取入れが終わるとだるまさまを迎えに行って、ごちそうをたらふく食べさせもてなすのがならわしです。
ある年いつものようにだるさまをもてなしていたねずみたちでしたが、ちゅうすけというねずみが、だるまさまに対してもんくをいいだしたのです。
すると、だるまは何を思ったのか、立ち上がり、、、、、、。
風刺的な意味合いがあるのかともとれる、お話しです。
私たちは意味のないものをありがたがっているだけではないのだろうか、とか、何かに騙されてうまくあやつられているのではないだろうか、と考えてしまいます。
おもうに「だるまさま」は何かの拍子に「かみさま」認定され、それを否定せず、されるがままに「かみさま」を演じていたのではないかと想像します。
しかし、ちゅうすけの発言によって、そのポジションは危うくなってしまうのです。
むかしは、おそらく神社の単位で、集落はまとまっていたのだと思います。
皆の心をひとつにまとめるためには、「かみさま」は必要だったったのではないでしょうか。
そこに、紛れ込んでしまった「だるま」さん。
そんなふうに担ぎ上げられてしまった人を皮肉っているのかな、と思いました。
ほこらに本来祭られていた神様は、どんなふうにそれをみていたでしょうか。
絵はすっきしていてとても美しい絵です。クリアな線と色彩の美しさは秀逸です。
現在は出版されていないとのことです。
が、アマゾンさんでは取り扱いがあるようです。